離乳食

離乳食を食べる赤ちゃん

離乳食って、なに?

母乳やミルクだけを口にしてきた赤ちゃんが、「食べる」ことを覚え、食事からエネルギーや栄養素をとれるようになっていく過程を「離乳」といいます。その練習期間の赤ちゃんの食事が「離乳食」。母乳やミルクを「飲む」のと固形の食事を「食べる」のとでは口の動きが違い、練習が必要です。まずはとろとろのポタージュ状からスタートし、少しずつつぶ感を残し、固さを変えて、徐々に形のあるものへ変化させていきます。5〜6ヵ月ごろから始めて、赤ちゃんのペースに合わせて1年くらいの期間をかけて進めていきます。

また、離乳食でエネルギーや栄養素をとることも離乳食を進める目的のひとつ。母乳やミルクは水分が約88%と多いために、生後6ヵ月ごろから、母乳やミルクだけでは成長に必要な栄養がまかなえなくなるので、食事からもエネルギーや栄養素をとる必要がでてきます。

離乳をすすめるとき、大切なこと

離乳食を食べる赤ちゃん

「食べる」口の発達を促す

母乳やミルクを「飲む」ときの口の動きと、形のあるものを「食べる」ときの口の動きはまったく異なります。離乳を適切に進めるためには、赤ちゃんの口や消化機能の発達に合わせて、ステップアップしていくことが大切です。その時期の赤ちゃんに合った固さや大きさにして、「かむ」「飲みこむ」などを練習しましょう。

赤ちゃんに合ったペースで進める

大人にも食事の好みや食べる量の違いがあるように、離乳の進み具合も赤ちゃん一人ひとりで違います。早く進めればよいというものではありません。月齢はあくまで目安。赤ちゃんの様子をよく見て、赤ちゃんに合ったペースでゆったりした気持ちで進めることが大切です。

食べる楽しみを伝える

離乳食が始まると、どうしても食べる量や進み具合が気になりがち。一生懸命に作った離乳食を食べてくれないときは、ママ・パパもつらいですよね。でも、「食べさせよう」と無理強いするのは禁物。赤ちゃんにも好みがあり、また、その日によって「食べたくない」と感じることも。食事の時に、大人ができるだけリラックスしていれば、赤ちゃんも「食べるって楽しい!」と感じるでしょう。離乳食作りが負担であれば、市販のベビーフードを取り入れる方法もあります。「おいしいね」「どんな味かな?」などと語りかけながら、食事の時間を親子で楽しみましょう。

離乳食のポイント

離乳食

離乳食は、大人の食事とはさまざまな点で違いがあります。その時々の赤ちゃんに合った離乳食を毎日用意するのは、とても手間のかかること。まとめて作って冷凍する、離乳食専用の調理用品を活用するなどして、簡単・便利に離乳食作りができる工夫を。手軽に食材やメニューの幅を広げるには、ベビーフードの活用も勧められます。ベビーフードは、赤ちゃんに与える前に、大人が一口食べて、固さや大きさ、味付けを確認すると、離乳食作りの参考になります。

衛生面

赤ちゃんのおなかはデリケート。新鮮な食材を選び、加熱調理が基本。ママ・パパの手はもちろん、食器や調理器具もよく洗って清潔を心がけます。

固さ・大きさ

赤ちゃんは離乳食を食べながら、舌、歯ぐき、あごを使って食べ物をかむことを練習していきます。離乳食の固さ・大きさは、口の動きの発達段階に合っていることが大切です。

味つけ

赤ちゃんの未発達な腎臓に負担をかけないために、離乳を開始したころは、調味料は使わず素材本来の味で与えます。離乳の進行に伴い、調味料を使用する場合も、素材の味をいかした薄味に。

量・回数

つぶしがゆ(10倍がゆをすりつぶしたもの)を1日1回、赤ちゃん用スプーン1さじから始めます。口や消化機能の発達に合わせて少しずつ量を増やします。離乳食を始めて1ヵ月ぐらいたったら1日2回に。2回の食事に慣れて食事のリズムが整ってきたら1日3回の食事にします。1歳を過ぎたら3回の食事に加えて1日に1~2回補食(おやつ)でさらにエネルギーや栄養素を補って。なお、初めての食材は、いずれも1種類ずつ、赤ちゃん用スプーン1さじから始めるのが基本です。

栄養面

離乳食に慣れ1日2回食にすすむころから、少しずつ栄養バランスを考えましょう。炭水化物、たんぱく質、ビタミン・ミネラルの栄養素を含む食品を、それぞれ1つ以上取り入れればOK。1回の食事で栄養バランスがとれているのは理想的ですが、2~3日の食事でおおよそのバランスがとれていれば大丈夫、とおおらかにとらえましょう。母乳・ミルクを飲む量は、離乳食が増えるに伴い、自然に減っていくことがほとんどです。

離乳のすすめ方の目安

離乳食を赤ちゃんに食べさせるママ

5〜6ヵ月ごろ頃になって、こんな様子が見られるようなら、離乳食を始めてOKのサインです。

・首がしっかりすわっている
・支えてあげれば、おすわりできる
・周りの人が食事しているとじっと見る、口をもぐもぐ動かしているなど、食べ物への興味が見られる
・赤ちゃんの唇に大人の指やスプーンを当てても嫌がらない

赤ちゃんの体調や機嫌がよく、ママ・パパの都合もよいときを選んで、始めましょう。

5〜6ヵ月頃

スプーンや、母乳・ミルク以外の味に慣れる時期。つぶしがゆ(10倍がゆをすりつぶしたもの)を赤ちゃん用スプーン1さじから始めます。1週間ぐらいして慣れたら野菜を、1ヵ月くらいしておかゆや野菜に慣れてきたら、白身魚や豆腐などのたんぱく質源を、いずれもすりつぶしてとろとろにした状態であげましょう。なお、固ゆでした卵黄は、最初は耳かき1さじ程度の少量を与えます。これらが食べられるようになってきたら、1日2回に増やします。

ワンポイント

はじめは母乳・ミルクを飲むように口を開けたままなので、食べ物がこぼれてしまいます。だんだん唇を閉じてゴックンとできるようになります。

この頃の口の動き

舌は前後に動くだけ。舌で口の奥に運んで、ゴックンと飲みこみます。つぶしたりかんだりすることはまだできません。

固さの目安

最初はとろとろのポタージュ状。次第にヨーグルトくらいの固さに進めていきます。

7〜8ヵ月頃

上あごと舌でつぶすことを覚える時期。口を閉じて飲み込めるようになり、1日2回の食事に慣れてきます。食材の種類、固さや量などを変えていきましょう。

ワンポイント

口の奥までスプーンを入れてしまうと、つぶさずに飲み込んでしまいます。赤ちゃん用スプーンを下唇の上にのせて、赤ちゃんが取り込むのを待ちます。

この頃の口の動き

舌は前後に加えて上下にも動き、食べ物を上あごと舌でつぶせるように。丸飲みせずにしっかりモグモグしていることが大切です。

固さの目安

指でつまむと簡単につぶれるくらい(絹ごし豆腐)

9~11ヵ月頃

バナナ程度の固さのものを前歯でかみとり、あごをよく動かして上下の歯ぐきでかむことを覚える時期。2回食が定着し、お散歩や睡眠などの生活リズムが整ってきたら、1日3回に増やして、朝・昼・晩の食事リズムを作ります。手づかみ食べが始まり、遊び食べをする赤ちゃんも。

ワンポイント

固さ・大きさが適当でないと丸飲みしてしまうことがあります。うまくかめていないようなら、固さ・大きさを変えてみましょう。

この頃の口の動き

舌が前後・上下のほか左右にも動き、バナナ程度の固さのものを前歯でかじりとり、あごをよく動かして上下の歯ぐきでかんでつぶせるように。

固さの目安

指でつまんで軽く力を入れるとつぶれるくらい(バナナ)

12~18ヵ月頃

エネルギーや栄養素の大部分を食事から摂るようになり、「自分で食べる」へと変わっていく時期です。前歯でかじりとり、奥の歯や歯ぐきでつぶして食べます。かむ力は大人より弱く、奥歯は生えてきますがまだ生え揃っていません。輪切り・千切り・いちょう切りなどいろいろな形状や大きさにするなど工夫して、かむ練習を促します。1度に食べられる量は多くないため、1日3回の食事の合間に、1〜2回の補食(おやつ)もとって、必要なエネルギーや栄養素を満たします。

ワンポイント

スティック状にしたパンやゆで野菜、おにぎり、おやきなど、手づかみメニューをとり入れて、自分で手に持って前歯でかじりとる練習を。興味をもったら、自分でスプーンを使って食べる練習を始めてもよいでしょう。

この頃の口の動き

舌は自由に動き、前歯で食べ物をかじりとって、奥の歯や歯ぐきでしっかりかんでから飲み込むようになります。

固さの目安

指でつまんで、やや強めに力をいれるとつぶれるくらい(肉だんご)。前歯でかじりとれる固さであることが大切です。

監修してくれた先生

堤ちはる先生 堤ちはる

相模女子大学 栄養科学部健康栄養学科 教授 日本女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院家政学研究科修士課程修了。東京大学大学院医学系研究科保健学専門課程修士・博士課程修了。保健学博士、管理栄養士。青葉学園短期大学専任講師、助教授、日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部栄養担当部長を経て、現職。専門は母子栄養学、保健栄養学。監修書籍に、「イラストBOOKたのしい保育「食」をとおして育つもの・育てたいもの」(ぎょうせい、2021)、「あんしん、やさしい最新離乳食オールガイド」(新星出版社、2019)、「食と栄養相談Q&A」(診断と治療社、2018)、「すききらいなんてだいきらい」(少年写真新聞社、2016)など。

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