【小児科医監修】 「除菌」はいつまで?赤ちゃんから幼児の衛生管理
「どこまでやればいい?」赤ちゃん~幼児期の衛生管理、基本の考え方
「哺乳びんの消毒は、いつまで続けたらいいの?」「おしゃぶりを使ったら、そのたびに消毒したほうがいい?」赤ちゃんとの暮らしが始まると、“きれい”にまつわる迷いが次々に出てきますよね。
生まれたばかりの赤ちゃんはお母さんからもらった免疫である移行抗体(IgG)を持っていますが、生後6ヵ月ごろにかけて減少します。その間、赤ちゃん自身の免疫機能はまだ十分に育っていないため、細菌やウイルスへの抵抗力が弱い時期が続きます。だからこそ、月齢が低い時期ほど衛生管理はしっかり行う必要があり、成長とともに免疫機能が育ってくると、「しっかり洗って乾かす」へと、少しずつ切り替えていくことができます。
この記事では、哺乳びんやおしゃぶりなどのお手入れから、手洗い・うがい、外出先での対応、ペットとの暮らし、食事や入浴、お洗濯まで、「いつまで消毒・除菌が必要か」「どのタイミングで卒業できるか」を解説します。
哺乳びん・おしゃぶりのお手入れ~消毒・除菌の種類と卒業のタイミング
哺乳びんやおしゃぶりは赤ちゃんの口に直接触れるものだからこそ、日々の洗浄・消毒・除菌が大切です。母乳や育児用ミルクは栄養が豊富なぶん、汚れが残っていると雑菌が繁殖しやすくなり、「まず丁寧に洗う」ことがすべての衛生管理の基本になります。とくに免疫機能が十分に育っていない赤ちゃんは、より丁寧に行いましょう。
月齢ごとの目安は、おおむね次のように考えられます。
0~3ヵ月は、免疫機能がまだ十分に育っていない時期です。口に入るものはすべてしっかり消毒・除菌を行いましょう。
4~5ヵ月になると、指しゃぶりやおもちゃを口に入れる動きが出てきます。哺乳びん関連の消毒・除菌は続けながら、口に入れる可能性があるおもちゃや歯固めも洗浄後に消毒・除菌しましょう。
6~8ヵ月は、離乳食が始まる時期です。哺乳びん関連や口に入れるものの消毒・除菌は段階的に簡略化していきましょう。一方、ずりばいやはいはいを始めるお子さまも多いこの時期は、床や家具をこまめに拭き掃除して清潔な環境を保ちましょう。
9~11ヵ月は、体調・発育に問題がなく、離乳食が進んでいれば、1才までに洗浄と乾燥中心に簡略化しても問題ありません。
1才以降は、「洗浄+乾燥+清潔な保管」が衛生管理の中心になっていきます。
哺乳・調乳器具、おしゃぶりや口に入れる可能性があるおもちゃなどの消毒については、離乳食が始まるころ(生後5~6ヵ月)を一つの目安に段階的に簡略化し、1才までに洗浄+乾燥中心に切り替えていきましょう。なお、厚生労働省の資料では「何ヵ月になったらやめる」という一律の目安は示されていません。お子さまの体調や発育の状況を見ながら、少しずつ切り替えていきましょう。
参考:厚生労働省「哺乳及び調乳器具の洗浄と滅菌」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/08/dl/s0817-6j_0002.pdf
哺乳びんの洗浄・消毒・除菌の基本
使ったあとはなるべく早めに洗い、よくすすいで乾かすことが基本です。消毒・除菌の方法には、煮沸・薬液・スチームなどがあります。どの方法も、表示や説明書を確認しながら、無理なく続けやすいものを選びましょう。
【表3-1】哺乳びんの主な消毒・除菌方法
※表は横にスクロールしてご覧いただけます
| 方法 | 準備するもの | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 煮沸 | 大きめの鍋、水 | 薬剤不要で経済的。特別な器具がいらない | 沸騰後3~5分、付きっきりで様子を見る必要がある |
| 薬液 | 専用消毒液、つけ置き容器 | 火を使わず、好きなタイミングで対応しやすい | 溶液の準備・定期交換が必要 |
| スチーム | 専用ケースまたは電子レンジ対応機器 | 短時間で完了。忙しいときでも取り入れやすい | 専用機器の購入が必要 |
哺乳びんを洗うスポンジについては、公的な決まりはありませんが、大人用と分けておくと、油汚れや調味料、生ものを扱った調理器具由来の汚れなどとの接触が避けられて安心です。
参考:厚生労働省「哺乳及び調乳器具の洗浄と滅菌」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/08/dl/s0817-6j_0002.pdf
おしゃぶり・歯固め、おもちゃのお手入れは?
お手入れの基本は哺乳びんと同様です。まず製品の表示や取扱説明書を確認しましょう。目に見える汚れがついているとき、外で落としてしまったとき、赤ちゃんの体調がすぐれないときは、いつもより丁寧に消毒・除菌すると安心です。
洗浄→消毒の方法とは?手洗い・うがいの練習は乳児期から少しずつ
手洗いは大人が見守りながら丁寧なサポートを
乳児期は大人が手を洗ってあげながら、「外から帰ったら手を洗う」「食事の前に手を洗う」といった習慣を身につけていく時期です。
1才半ごろからは、「自分でやってみたい」という気持ちが芽生え始めます。手をぬらす、せっけんの泡をのせる、洗い流すといった簡単な動作から、大人と一緒に手洗いの練習を始めてみましょう。2才ごろからは、手の甲や指の間も洗うことを意識した練習につなげましょう。就学前後にかけて自分から手を洗える子が少しずつ増えてきますが、それまでは大人が見守りながらサポートを続けましょう。
参考:こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/c60bb9fc/20230720_policies_hoiku_25.pdf
参考:国立成育医療研究センター「正しい手洗い(手指衛生)の方法」
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/kansen/fusegu/tearai.html
うがいはお子さまのペースであせらずに
まずは口の中ですすぐ「ぶくぶくうがい」から始めましょう。「口に水を入れてもすぐ飲み込まない」「口にためた水を外に出せる」といった様子が見えてきたら、遊びの延長で少しずつ試してみるとよいでしょう。
日本歯科医師会の資料によると、ぶくぶくうがいができるのは3才ごろで約半数、4才ごろで約75%、ガラガラうがいは3才で約25%、5才ごろで約75%が目安です。ただ、年齢だけを基準にするのではなく、お子さまの様子を見ながら焦らず進めていきましょう。
参考:日本歯科医師会「うがいの練習・指導」
https://www.jda.or.jp/dentist/program/pdf/ugai_renshuu.pdf
外出先での衛生管理とマナー
外出先では、自宅のようにすぐに手が洗えないこともあります。「その場で拭くべきか、帰宅後の手洗いで十分か」を判断する基準は、目に見える汚れがあるかどうかです。砂や泥、食べこぼしなどがついているときは、清潔なガーゼやウェットティッシュですぐに拭き取ります。目立った汚れがなければ、帰宅後にせっけんと流水でしっかり洗えば大丈夫です。
ただし、吐いたもの(嘔吐物)や便に触れた可能性があるとき、手に傷があるとき、汚れた手で口や鼻、目を触ってしまったときは、できるだけ早くせっけんと流水で洗うことを優先してください。
月齢や状況ごとの具体的な対応については、後半のQ3も併せてご覧ください。
ペットとの健やかな共生~衛生的な距離感と掃除のコツ
赤ちゃんとペットが一緒に暮らすときは、適切な距離感とルールを整えることが大切です。寝る場所を分ける、顔をなめさせない、食器やスプーンを共用しない、排泄物は大人が速やかに処理する、ふれ合ったあとは手を洗う、といった基本を意識しましょう。
なお、爬虫類は犬や猫とは別の感染リスクが指摘されているため、乳幼児がいる家庭ではとくに慎重に考えたいところです。
参考:環境省「人と動物の共通感染症に関するガイドライン」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/infection/guideline.pdf
生活シーン別「頑張りすぎない」衛生管理のポイント
食事・遊び・寝室の心得
離乳食器は食べ残しやぬめりをきちんと洗い流し、よく乾かして保管できていれば、日々のお手入れとしては十分です。離乳食器のスポンジは、公的なガイドラインで専用のものを使うよう定められているわけではありませんが、大人の食器用と分けておくと、油汚れや赤ちゃんがまだ摂取できない食材の汁などとの接触が避けられて安心です。
遊びの場面では、よだれや食べこぼしがついたおもちゃを拭く・洗う、外遊びから帰ったら手を洗う、といった流れを決めておくと実践しやすいです。目に見える汚れがあるときは対応する、体調がすぐれないときは少し丁寧に行う、と考えると無理なく続けやすいでしょう。
室内の清掃は、汚れをためこまないことを意識できれば十分です。掃除機がけやシーツ交換など、基本のお手入れを続けることが、ダニやカビ対策にもつながります。お子さまが病気で戻してしまったときの対処法は、後述のQ6をご覧ください。
お風呂とお洗濯のギモン~ベビーバスの卒業時期とお洗濯を分ける目安は?
1ヵ月健診を終えたころからベビーバスを卒業し、大人と一緒のお風呂へ移行していくのが一般的です。浴槽の掃除は特別な除菌剤を使わなくても、日ごろのお手入れで十分清潔を保てます。大人が入浴剤を使ったあとのお湯に赤ちゃんが入る場合は、肌への刺激に配慮して、最後にシャワーで流してあげると安心です。
赤ちゃんの洗濯物を大人と分けるかどうかには、一律の基準はありません。新生児期から生後1ヵ月ごろまでは分けて洗うと安心ですが、その後は赤み、かゆみ、湿疹がないかを見ながら、少しずつ一緒に洗っていく考え方でも構いません。香りの強い洗剤や柔軟剤は刺激になることがあるため、切り替えるときは無香料・低刺激のものから試してみましょう。
よくある疑問Q&A|衛生管理の「これってどうなの?」
- Q1:消毒・除菌を早くやめると、病気になりやすくなりませんか?
- A:必要以上に心配しすぎなくても大丈夫です。よく洗って清潔に乾かすことを基本に、体調不良時や夏場などはふだんより丁寧に対応すると安心です。
- Q2:ペットの抜け毛が赤ちゃんの口に入ってしまっても大丈夫?
- A:少量であれば過度に慌てすぎなくてもよい場合が多いですが、気になるときは口の中を確認し、見える毛があればそっと取り除きましょう。その後は、咳き込みが続かないか、苦しそうな呼吸がないか、顔色が悪くないか、吐いたりぐったりしたりしないかに注意してください。いつも通り母乳やミルクが飲めていて、機嫌も普段と変わらなければ、様子見でよいことが多いです。
- Q3:外出先で地面を触ってしまいました。すぐに消毒・除菌すべき?
- A:まずは、目に見える汚れがあるかどうかを確認しましょう。外出先では、地面やベビーカーのタイヤ、大人の靴など、思わぬものにお子さまの手が触れてしまうことがあります。砂や泥などの汚れがついている場合は、口や顔まわりを触らないようにしながら、清潔なガーゼやウェットティッシュでやさしく拭き取りましょう。洗える場所があれば、その場でせっけんと流水で洗えると安心です。
目立った汚れがなければ、帰宅後にせっけんと流水でしっかり手を洗えば十分な場合がほとんどです。ただし、吐いたもの(嘔吐物)や便に触れた可能性があるとき、手に傷があるとき、汚れた手で口や鼻、目を触ってしまったときは、できるだけ早く手洗いを優先しましょう。
- Q4:手洗いを嫌がるときはどうすればいいですか?
- A:歌を歌ったり、泡が出る様子を楽しんだりして、「手洗いは楽しい時間」と思えるような工夫から始めましょう。
- Q5:アルコール入りのウェットティッシュは、いつから使っていいですか?
- A:「◯才から」という決まった目安はなく、年齢よりも「どこに使うか」で選ぶことが大切です。アルコールは刺激になることがあるため、赤ちゃんの手や口、顔まわりなど肌に触れる部分にはアルコールなしのタイプを選びましょう。おもちゃやテーブルなど「モノ」の除菌にはアルコール入りも便利に使えます。
- Q6:赤ちゃんや幼児から大人にうつる感染症で気をつけたいものはありますか? また、嘔吐してしまったときは、どこまで消毒・除菌を意識すればいいですか?
- A:家庭内でとくに気をつけたいのは、嘔吐や下痢を伴う感染性胃腸炎(ノロウイルスやロタウイルスなど)です。感染力が非常に強いため、お子さまが嘔吐したときはウイルスを広げないことを意識した対策が必要です。
マスクや使い捨て手袋を着用し、吐いたもの(嘔吐物)や便を静かに拭き取った後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤を希釈したもの)で消毒します。アルコール消毒だけではノロウイルスなどのウイルスには効果が薄いため注意が必要です。処理後は部屋の換気を十分に行い、流水とせっけんで入念に手洗いをしてください。使用したペーパータオルや手袋は、ビニール袋に密閉して廃棄します。お子さまの症状が強いときには、すぐに医師に相談してください。
まとめ~衛生管理は「安心」と「成長」のバランスで
月齢が低い時期は、消毒・除菌をしっかり行うことが赤ちゃんを守ることに直結します。その時期を経て、成長とともに免疫機能が育ってくると、毎回の消毒・除菌から「しっかり洗って乾かす」へと、少しずつ切り替えていくことができます。大切なのは「完璧にきれいにすること」ではなく、今の月齢と体調に合わせた対応を続けることです。それぞれのご家庭にとって「ちょうどいい」きれいの形を、無理なく続けていけるといいですね。
監修してくれた先生
五藤 良将(ごとう よしまさ)
所属:医療法人社団五良会 竹内内科小児科医院 院長
医療法人社団五良会 理事長
経歴:千葉県立東葛飾高校卒、防衛医科大学校医学部卒。その後に自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどの勤務を経て2019年9月に継承開業に至る。
資格:医師免許、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医、日本医師会産業医、日本美容内科学会評議員



